通達・判例でたどる労働安全衛生
労安衛法は条文だけでは読めません。行政解釈を示す 通達(基発・安衛発) と、 安全配慮義務の司法解釈を示す 最高裁判例 が揃って初めて実務に届きます。 監督官・社労士・弁護士が一次情報として参照する第2層出典を合計 30 件整理しました。
通達・告示 (15件)
厚生労働省労働基準局が発出する行政解釈。条文の運用細目・経過措置・事業者指針を示します。
- 基発0622第2号施行 2019-02-01影響 高
墜落制止用器具(フルハーネス型)の安全な使用に関する特別教育等
安衛則改正(2022年1月施行)に伴うフルハーネス型墜落制止用器具の構造規格・特別教育のカリキュラム・使用開始時期の経過措置を示した基本通達。
- 基発0115第1号施行 2022-01-15影響 高
フルハーネス義務化後の運用における留意事項
2022年1月施行のフルハーネス原則義務化に伴い、6.75m以下での胴ベルト使用可否・ランヤードのショックアブソーバ区分・ハーネス認定品の判別等の運用基準を明示。
- 基発0531第9号施行 2023-04-01影響 高
労働安全衛生規則等の一部を改正する省令等の施行について(化学物質自律管理)
化学物質管理者・保護具着用管理責任者の選任、リスクアセスメント対象物質674物質、皮膚等障害化学物質等の規制導入の施行通達。自律的管理の基本方針。
- 基発0427第1号施行 2024-04-01影響 中
皮膚等障害化学物質等への直接接触の防止措置に係る運用
2024年4月施行の皮膚等障害化学物質等の指定(約260物質)と、事業者が講じる不浸透性保護具等の措置、SDS交付時の記載義務について解説。
- 基発0914第1号施行 2021-09-15影響 高
脳・心臓疾患の労災認定の基準(改正)
20年ぶりに改正された脳心疾患の認定基準。長時間労働に加え『勤務時間の不規則性』『出張の多い業務』『心理的負荷を伴う業務』等を総合評価するよう拡大。
- 基発0901第2号施行 2023-09-01影響 高
心理的負荷による精神障害の認定基準(改正)
精神障害労災の認定基準を13年ぶりに改正。カスタマーハラスメント・感染症対応業務を出来事に追加、心理的負荷評価表の具体的事例を大幅刷新。
- 基発0120第3号施行 2017-01-20影響 高
労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン
使用者が労働時間を適正に把握する責務と、タイムカード・ICカード等の客観的記録の原則。持ち帰り残業・自己申告制の運用ルールを明示。
- 基発1223第3号施行 2024-04-01影響 高
改善基準告示の一部改正(自動車運転者の労働時間等)
2024年4月施行。トラック運転者の拘束時間の上限を年3,300時間(原則)に短縮、1日11時間の休息期間確保を原則化。運送業の2024年問題に対応。
- 基発0316第3号施行 2020-03-16影響 中
高年齢労働者の安全と健康確保のためのガイドライン
エイジフレンドリーガイドライン。高年齢労働者の特性に合わせた安全衛生管理体制、職場環境改善(照度・段差・休憩設備)、健康管理の具体的対策を示す。
- 基発0427第4号施行 2024-04-01影響 中
個人ばく露測定の実施に関する事業者が講ずべき措置
2024年4月から新設された個人ばく露測定制度の運用。C測定・D測定との関係、対象物質、サンプリング手順、記録保存30年の事業者義務を詳述。
- 令和2年厚生労働省告示第5号施行 2020-06-01影響 高
事業主が職場における優越的な関係を背景とした言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置等についての指針
パワハラ防止法(労働施策総合推進法)施行に伴う事業主指針。パワハラの6類型と雇用管理上の措置義務を具体化。SOGIハラも対象に明示。
- 基発1225第1号施行 2025-04-01影響 高
カスタマーハラスメント対策の事業者指針(2025年4月施行)
改正労働施策総合推進法に伴うカスハラ対策の事業者義務化(2025年4月)。相談体制・従業員保護措置・従業員教育・事後対応の4本柱を示す。
- 基発0420第3号施行 2021-04-20影響 中
職場における熱中症予防基本対策要綱
WBGT指標と作業区分別の基準値、暑熱順化(馴化)7日間、作業中断の判断、2025年の罰則付き義務化に向けた事業者の段階的対策。
- 基発0520第3号施行 2015-07-01影響 中
足場からの墜落・転落災害防止総合対策推進要綱
一側足場・二側足場の使用区分、手すり先行工法の原則、最大積載荷重の表示、足場組立等作業主任者の選任基準等を総合的に整理した要綱。
- 基発0701第1号施行 2023-10-01影響 高
石綿障害予防規則等の一部改正(事前調査の有資格者要件)
2023年10月以降、建築物の解体・改修前の石綿事前調査は有資格者(建築物石綿含有建材調査者)による実施を義務化。調査結果の電子報告も義務化。
判例 (15件)
安全配慮義務・労災認定・両罰規定に関する主要な最高裁・高裁判例。事件番号をクリックで裁判所データベースを参照できます。
- 最三小判昭和59年4月10日 民集38巻6号557頁最高裁判所第三小法廷影響 高
川義事件(宿直中の強盗殺人事件と安全配慮義務)
使用者は労働契約に付随して労働者の生命・身体の安全を確保すべき『安全配慮義務』を負うと初めて明示。商社の宿直中に強盗殺人に遭った社員の遺族が勝訴。
📌 要旨: 労働契約の付随義務として安全配慮義務が認められた最初の最高裁判例。
- 最二小判平成12年3月24日 民集54巻3号1155頁最高裁判所第二小法廷影響 高
電通事件(過労自殺と使用者の予見可能性)
長時間労働による過労自殺について、使用者には従業員の健康配慮義務違反を認定。過重労働が精神疾患と自殺を引き起こすことの予見可能性を明示。
📌 要旨: 過労自殺に対する使用者の安全配慮義務違反と損害賠償責任を認めた代表判例。
- 最二小判平成26年3月24日 民集68巻3号230頁最高裁判所第二小法廷影響 高
東芝うつ病解雇事件(休職期間満了による解雇の可否)
過重業務が原因でうつ病を発症した労働者への使用者側の配慮義務、および休職期間満了による自然退職扱いの有効性を争った事件。使用者の認識可能性を広く解釈。
📌 要旨: メンタル不調の労働者への使用者の健康配慮義務の範囲を示した判例。
- 最三小判昭和50年2月25日 民集29巻2号143頁最高裁判所第三小法廷影響 高
陸上自衛隊八戸車両整備工場事件(安全配慮義務の公務員適用)
公法上の法律関係においても、特別な社会的接触の関係に基づき、信義則上の付随義務として安全配慮義務が認められると判示。労働安全衛生法理論の基礎判例。
📌 要旨: 安全配慮義務が公法関係にも及ぶことを示した先駆的判例。
- 最二小判平成12年10月13日 労判791号6頁最高裁判所第二小法廷影響 中
システムコンサルタント事件(長時間労働と健康配慮義務)
恒常的な長時間労働による脳幹部出血の発症について、使用者の過重労働管理義務違反を認定。タイムカード等の客観的記録の重要性を示唆。
📌 要旨: IT業界の長時間労働と脳血管疾患の労災認定と会社責任の結節点判例。
- 最三小判平成16年4月27日 民集58巻4号1032頁最高裁判所第三小法廷影響 中
三菱重工長崎造船所事件(じん肺と因果関係)
造船現場での長期粉じんばく露によるじん肺罹患について、使用者の安全配慮義務違反と損害賠償を認定。最終ばく露時点からの除斥期間の起算点を整理。
📌 要旨: じん肺・石綿等の長期ばく露労災の除斥期間・因果関係判断の基準判例。
- 最二小判平成20年2月14日 労判958号5頁最高裁判所第二小法廷影響 中
システム監査事件(精神疾患発症と労災保険給付)
精神障害の業務起因性判断において、『平均的労働者を基準』にするのか『当該労働者を基準』にするのかの論点を整理。現在の精神障害認定基準の土台。
📌 要旨: 精神障害労災の業務起因性判断基準(平均人基準説)を示した先例。
- 福岡高判平成5年2月25日 労判626号24頁福岡高等裁判所影響 中
三井三池じん肺訴訟(企業の予見義務)
炭鉱労働者のじん肺について、企業の粉じん対策義務と予見可能性の水準を検証。『科学的知見の程度に応じた義務』概念の出発点。
📌 要旨: 炭鉱粉じん災害における予見可能性と結果回避義務の構造を示した判例。
- 東京高判平成30年7月24日 労判1192号42頁東京高等裁判所影響 中
クリーニング会社業務上過失致死事件(両罰規定適用)
労働者が業務上のドライクリーニング機操作中に有機溶剤中毒で死亡。会社と代表者の両方を労安衛法の両罰規定により起訴、有罪確定。
📌 要旨: 労安衛法の両罰規定による法人と経営者の同時刑事責任を確定した事例。
- 最一小判令和3年5月17日 民集75巻5号1359頁最高裁判所第一小法廷影響 高
建設アスベスト訴訟(最高裁判決)
建設労働者のアスベスト被害について、国の規制権限不行使の違法性と建材メーカーの共同不法行為責任を認定。一人親方への労安衛法適用の射程を拡大。
📌 要旨: 建設アスベストの国家賠償責任と建材メーカーの共同責任を認定した大規模労災判例。
- 最三小判令和2年11月18日 労判1240号5頁最高裁判所第三小法廷影響 中
社会福祉法人事件(上司のパワーハラスメントと安全配慮義務)
上司による過度な叱責・暴言と自殺との因果関係、および法人の職場環境配慮義務違反を認定。パワハラ防止法制定の重要な判例的背景。
📌 要旨: パワハラと自殺の因果関係・会社責任を認定した近年の代表判例。
- 東京地判令和元年6月20日 労判1216号18頁東京地方裁判所影響 中
看護師腰痛労災事件(労災認定取消訴訟)
腰部に著しい負担のかかる業務(腰痛)の認定基準(昭47.9.18基発644号)の要件解釈を行い、看護師の業務上腰痛認定の範囲を具体化。
📌 要旨: 医療・介護職の業務上腰痛の認定範囲を示した地裁判例。
- 大阪地判平成28年9月13日 判時2337号132頁大阪地方裁判所影響 中
フォークリフト死亡事故刑事事件(業務上過失致死)
フォークリフトの後進時巻き込みによる死亡事故について、安全通路の区画不備と作業計画策定違反(安衛則151条の3等)について事業者処罰。
📌 要旨: フォークリフト事故の事業者刑事責任を具体的義務違反で構成した判決。
- 名古屋高判平成26年11月26日 労判1110号48頁名古屋高等裁判所影響 中
感電死亡事故と低圧電気取扱特別教育義務
低圧電気取扱業務の特別教育(安衛則36条4号)を未実施のまま従事させ、感電死亡に至った事案。事業者の教育義務違反を認定。
📌 要旨: 低圧電気取扱特別教育義務違反と感電事故を直接因果でつないだ判例。
- 最三小判令和5年7月11日 判例集未登載最高裁判所第三小法廷影響 中
経済産業省トイレ使用制限事件(SOGIと合理的配慮)
トランスジェンダー女性職員のトイレ使用制限の違法性を認定。職場のSOGIに関する合理的配慮と安全配慮義務の射程を広げた重要判例。
📌 要旨: 職場SOGIに関する事業者の合理的配慮義務を初めて最高裁が認定。